
スーパーバンタム級は、スピードと回転力が支配する階級だ。
一瞬の判断遅れが、そのままダウンにつながることも珍しくない。
そして正直に言えば、中谷潤人のスーパーバンタム級初戦は、
これまでの階級のように最初から一方的な展開だったわけではない。
階級アップに伴うフィジカルの違い、相手の打たれ強さ、距離感の変化。
それらを慎重に見極めながら進める、適応の試合だった。
それでもなお、試合を通して浮かび上がったのが、リーチ174cmから放たれる「刺し抜くジャブ」の有効性だ。
なぜこのジャブは、スーパーバンタム級という新しい環境でも確実に機能し始めたのか。
その理由を、技術的に紐解いていく。
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スーパーバンタム級で「174cm」はなぜ効いてくるのか
スーパーバンタム級(55.3kg)の平均的なリーチは、168〜170cm前後とされている。
中谷潤人のリーチ174cmは、差にすれば+4〜6cm程度だ。
数字だけを見れば「そこまで突出しているわけではない」と感じるかもしれない。
しかしボクシングでは、この数センチが安全圏と被弾圏を分ける境界線になる。
特に階級アップ初期の段階では、無理に踏み込まずに距離で主導権を取れるかどうかが、試合運びを大きく左右する。
中谷潤人の「刺し抜くジャブ」が普通と違う理由
① 最後まで伸び切る直線構造
中谷のジャブは、途中で止まらない。
- 肘が余らず
- 肩がしっかり入り
- 拳が最後まで加速する
そのため、相手が「この距離なら届かない」と判断した瞬間に、半拍早く顔面に到達する。
スーパーバンタム級初戦でも、このジャブが距離の基準を作り続けていた。
② 軽く見えて、実は前進を止めるジャブ
見た目はコンパクトだが、次の動きがズレなく同期している。
- 前足の踏み込み
- 骨盤の移動
- 上半身の回転
その結果、ジャブでありながら相手の前進を止めるだけの圧力が生まれる。
初戦では派手なKOに直結しなくとも、相手のリズムを削り、不用意な踏み込みを抑制する効果を発揮していた。
③ サウスポーとリーチ174cmが生む距離の錯覚
中谷はサウスポー。相手のジャブと正面で交錯する位置から、より長い左が飛んでくる。
相手は次の三択で詰む。
- ジャブを警戒して止まる
- 前に出ると左ストレートの射程に入る
- 下がっても、ジャブが届く
これは一発で仕留める武器ではないが、試合全体を支配する距離構造を作り出す。
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初戦が示したのは「苦戦」ではなく「適応力」
スーパーバンタム級初戦は、距離とテンポを慎重に探る時間帯が存在した。
だがそれは、階級の壁に阻まれたというよりも、新しい条件に合わせて戦い方を調整していた過程と見るのが自然だ。
危険距離に無理に踏み込まず、ジャブで主導権を保ち続けた点は、むしろ中谷潤人のスタイルの強さを示している。
なぜ階級を上げても通用する土台になるのか
中谷潤人の強みは、最初から打ち合いに行かなくても試合を成立させられる点にある。
- 被弾を抑え
- テンポを管理し
- 相手に「考える時間」を奪う
この構造があるからこそ、スーパーバンタム級という新しい階級でも安定して戦える。
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まとめ|反則級なのは「数字」ではなく「距離感」
174cmというリーチは、数字だけを見れば特別ではない。
だが、
- 正確な距離認識
- 伸び切るフォーム
- サウスポーという構造
- ジャブ中心の設計思想
これらが組み合わさることで、体感ではそれ以上に感じさせる距離が生まれる。
スーパーバンタム級初戦を経て、このジャブは確実に“通用する武器”であることを示し始めた。
※本記事は公開試合映像・公式情報をもとにした技術的考察です。
よくある質問(FAQ)
Q. リーチ174cmはスーパーバンタム級でどれくらい有利?
A. 平均より数センチ長い程度でも、ボクシングでは安全圏と被弾圏の境界になり得ます。中谷はその差を技術で最大化しています。
Q. 「刺し抜くジャブ」の強みは何?
A. 伸び切る直線と体重移動の同期により、距離感を壊し、前進を止め、判断を遅らせる効果が同時に出る点です。
Q. 階級を上げても通用する理由は?
A. 危険距離に入る前に主導権を握り、被弾を抑えながらテンポを管理できる構造があるためです。

