最近メキシコの祝日「シンコ・デ・マヨ」に標準を合わせてイベントを開催する事が多いですね。
2017年5月6日、シンコ・デ・マヨのその翌日、メキシカンスーパースター同士の一戦が、T-モバイル・アリーナで行われました。
サウル・アルバレスvsフリオ・セサル・チャべスJr。大方の予想はアルバレス圧倒的有利。
試合は予想通り、殆ど手が出ないチャペスJrに対して、アルバレスは素早く、重いコンビネーションを浴びせ、フルマークの判定勝ちを収めました。
そしてこのメインの後には、さらなる余興が。アルバレスがゴロフキンをリングに呼んだのです。
しかもゴロフキンの入場曲付き、アルバレスはチャペスJrに勝つなんて当たり前だと思っていたのでしょう、だからこそこの演出の用意をしていたのです。
そして同年9月、WBA、WBC、WBO、IBF全てのベルトがかけられ、誰もが待ち望んだミドル級タイトルマッチ「ゲンナジー・ゴロフキン対サウル・アルバレス」戦が行われました。
1Rから12Rまで、ダウンシーンこそなかったものの、緊張感あふれるナイスファイトでしたね
それでも、おそらく殆どのラウンドでゴロフキンの10-9だったと思いますが、結果はドロー。所謂「疑惑の判定」になってしまいました。
村田vsエンダム然り、疑惑の判定の後は、当然再戦が行われます。
丁度1年後の2018年5月5日、「ゲンナジー・ゴロフキン対サウル・アルバレス-2」がセッティングされました。
現代中量級の王者は誰か、誰もが待ち望んでいたところ、ゴールデンボーイ・プロモーションズより、アルバレスから禁止薬物の陽性反応が出たと発表、そして4月3日試合の中止を通知。
最近はキャッチウェイトでしか戦っていなかったアルバレス、2017年のゴロフキン戦でも負けを認めず、そして今回の薬物騒動、かなり株を落としている事は否めません。
そこで浮上してくるのは他のミドル級トップ戦線にいる選手たち。その中にはもちろん、村田諒太の名前もあります。
では、2018年を代表する試合になるはずだったサウル・アルバレス対ゴロフキン再戦中止に関して、そしてそれが村田諒太に与える影響に関して書いていきたいと思います。
サウル・アルバレスVSゴロフキン再戦がキャンセル‼
4月3日、多くのボクシングファンが落胆したことでしょう!
2018年最大級のスポーツイベント「サウル・アルバレス対ゴロフキン2」の中止アナウンスによるものです。
2月17日と2月20日に行われたドーピング検査にて、アルバレスの体からはクレンブテロールという禁止薬物が検出されたとのこと。
日本で行われたルイス・ネリvs山中慎介の第一戦の後、ネリの方から薬物反応があり、その時はジルパテロールという薬物でした。
クレンブテロールもジルパテロールも似たような薬物で、食肉牛の肉質改善に使われています。そして人に使われると筋肉増強、脂肪分解の作用があるそうです。
これを受けて、アルバレスには暫定ではありますが資格停止処分が下され、ゴールデンボーイ・プロモーションズ自ら、5月5日に行われるゴロフキンとの再戦をキャンセルする通知を出しました。
おそらくこれは覆らないでしょう。
これを受けてアルバレスの方は
「自分はボクシングというスポーツを尊敬しているし、今回このような結果になってしまったことを申し訳ないと思っている、決して意図的にクレンブテロールを摂取したわけではなく、食した牛肉に入ってしまったのだ」
と弁明をしています。
ルイス・ネリの時と薬物の種類こそ違えど、同じパターンですよ!でもネリの時は牛一頭分の肉を食さないと検出出来ないレベルの量だったとか。。
確かにメキシコでは同様の問題がボクシングだけではなく、自転車競技、ラグビー、サッカーでも発生しているようです。
これは国の薬物に対する姿勢も関わっていて、アメリカではクレンブテロールの使用を禁止しているのですが、メキシコではまだ使用可なのです
ネバダ州アスレチックコミッションは、WADA(世界アンチ・ドーピング機関) の規則に基づき厳格な処分を下すことで知られています。
アルバレス程の選手がこれを受けて衰えを見せなければいいのですが、アルバレスの復活劇に注目したいですね
上述のようにアルバレスは今回の件は不可抗力で起こったと弁明し、ゴロフキンとの対戦はもう少し時間をくれと、メディアに伝えています。
ではゴロフキン側はどのような対応を取っているかというと、あくまでも5月5日に標準を合わせており、
アルバレスのピンチヒッターをもうすぐオフィシャルで公表すると、ツイッターで書いています。
ファンの間では、既に候補選手の名前が数名挙がっていますね。
ESPNが報じたハイメ・ムンギア、ゲイリー・オサリバン、デメトリアス・アントラーデが現実的なところ。
実績、勢い等考えれば、WBOスーパーミドルのルベルト・ラミレスが面白そうですが、何せ彼はカネロプロモーションズに所属しちゃっているので、おそらく無理でしょう。
以前「スーパーウェルターからスーパーミドルまでなら誰とでも戦う」
と公言しているゴロフキンなので、例えばクリス・ユーバンクJrやジョージ・グローブスとの対戦も考えられますが
5月5日という対戦相手にとってかなり短い準備期間を考えると、ジャイアントキリングを狙うアンダードッグしか出てこないと思われます。
現実的なところでやはり、対ハイメ・ムンギア戦かゲイリー・オサリバン戦でお茶を濁すでしょう。
ただ当然ながら、どんな選手が来ても元々の対アルバレスの盛り上がりは見せられないと思います。
2001年、代替挑戦者としてレーロホノロ・レドワバに挑んだパッキャオのような怪物がいるか
と期待したくなりますが、ここはゴロフキンにもやもやを払拭するような失神KOを見せてほしいところです!
村田諒太はどうなるの?
アルバレスvsゴロフキンが中止になったにせよ、今ミドル級の中心にいるのは彼ら2人と言って間違いはありません。
その勢力図崩壊のため虎視眈眈とチャンスを狙うのが、ミドル級の猛者たちです。
WBOチャンピオンで元オリンピアンのビリー・ジョー・サンダース
そのサンダースに敗れはしたものの、力を溜めて打つような豪快左フックが武器のデビット・レミュー
ゴロフキンの連続KOを止めたダニエル・ジェイコブス
そして疑惑の判定を乗り越え、2度目の挑戦で世界のベルトを掴んだ金メダリスト村田諒太です。
現時点で村田に対する評価は、このメンバーの中だと最も下にいます。
オリンピック金メダリストでも、世界にとっては新参者のチャンピオンであり、誰もが知る強豪との試合はまだありません。
チャンピオンが乱立する現代ボクシングのネガティブな面ですね。
今後強さを証明していくのであれば、4月15日での対ブランダムラを完封し、その後トップ戦線への階段を昇って行ってほしいと思います。
以前は、「村田がゴロフキンに勝つなんて到底無理、相手にすらしてくれない」という声が多かったですが
アルバレスの一時的な離脱、たまに良いパンチを貰うゴロフキンの衰えが見えてくると、「もしかしたら。。」という意見も多くなってきました。
村田ももう32歳、今後そう長くないボクシング人生の中で、ゴロフキンかアルバレス、いずれかとの戦いが彼のボクサーとしての価値を最大に高めると思います。
村田vsアッサン・エンダムは疑惑の判定の後の圧倒的勝利という感情移入しやすいストーリーを提供出来ましたが、それは日本国内での話。
海外、特にアメリカを主戦場とする実績有るボクサーとの対戦、そして勝利を掴みとらないと、ゴロフキン、アルバレスというラスボスには辿りつけないでしょう。
そこで、最も良い材料がビリー・ジョー・サンダース。
アッサン・エンダムよりも前に、村田の世界挑戦の候補として有力だったボクサーなのです。
村田の世界初挑戦の相手だからそこまで強くないだろう、というのが下馬評でしたが、現在では26戦26勝12KO、既にWBOミドル級の3度の防衛を誇っており
村田にとってはこの直近の先輩王者を倒すことがミドル級戦線の前線へ行く近道になるはずです。
技巧派のサウスポーで、アマチュア出身の村田には戦いやすい相手かと思います。サンダースはレミューにも勝っていますし、いい布石になるでしょう。
何より上述のゴロフキン対アルバレスの中止を受けて、最も発言が多いのがサンダース陣営のプロモーター:フランク・フォーレン。
ウィリー・モンローJr、デビット・レミュー、全てゴロフキンの犠牲者であることからして、サンダース陣営もゴロフキンを最終標的として掲げていることは明白です。
では5月5日のゴロフキンの相手に名乗り出ればいいのではないか、と思いますが、実は3月下旬に拳の怪我があったようで
約1か月間はパンチが打てないと医師からの通達があったそうです。それで5月5日の試合はかわいそうですよね・・
6月に開催しようとゴロフキン陣営にオファーを出したそうですが、5月5日はキャンセル出来ないとの事で、可能性があるとしたら9月になりそうですね。
9月にゴロフキン対サンダースが実現するか否かは分かりません、もしかしたらここにゴロフキン対カネロが入ってくる可能性もあります。
しかし、これだけゴロフキンに対してアピールをしているサンダース。村田との対戦が実現し、仮に村田が勝利を手にしたら、ミドル級戦線での発言力は相当なものになるはずです。
対ブランダムラ戦をクリアしたら、次戦はアメリカでの試合をやらせるとボブ・アラムも明言しているので、可能性は大です。
なんとしても4月15日、日本での試合を明確な形で終わらせてほしいと思います!
まとめ
以上、ゴロフキン対アルバレスの中止と村田諒太の今後に関して書かせて頂きました。
薬物による中止は確かに残念ですが、覆るような雰囲気もないですし、ボクシングファンとしてはこの混沌としたミドル戦線を楽しみたいと思います。
ボクシングというリアルに死の危険性のあるスポーツにおいて、陸上競技のように薬物に対して敏感になるのは当然のことです。
それでもゴロフキンとアルバレスがミドルの中心にいるのは間違いのない事実であり
そのミドル級チャンピオンに、かつては考えられなかった日本人がいるというこの状況を
ボクシングファンとして楽しみ、ミドル級のラスボス・ゴロフキンまでの村田の道のりを追っていきたいと思います。
おわり