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「【動画あり】テレンス・クロフォードの歴代ベストバウトTOP5!スペンス戦から伝説のカネロ戦まで」

「ミスター・パーフェクト」が、ついにリングを降りました。

2025年12月16日、現役引退を正式に発表したテレンス・“バド”・クロフォード。
そのキャリアは42戦全勝(31KO)。ライト級、スーパーライト級、ウェルター級、スーパーウェルター級、そしてスーパーミドル級と、5つの階級を渡り歩き、その全てで「最強」を証明し続けました。

彼の凄さは、単に「負けない」ことではありません。対戦相手のレベルが上がれば上がるほど、まるで相手を鏡に映すように自分のレベルを引き上げ、残酷なまでに一方的に叩きのめす。その「底知れなさ」に世界中のボクシングファンが震えました。

本記事では、クロフォードが築き上げた伝説の中から、ボクシング史に残る「歴代ベストバウトTOP5」を厳選し、試合背景や技術的な見どころと共に徹底解説します。

なぜ彼がメイウェザーやパッキャオと並び称される「GOAT(史上最高)」の一人なのか。その答えは、この5つの試合に全て凝縮されています。

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【第5位】vs ユリオルキス・ガンボア(2014年)

〜「スイッチヒッター」の覚醒、若き才能が怪物を飲み込んだ日〜

  • 階級: WBO世界ライト級タイトルマッチ
  • 会場: ネブラスカ州オマハ(地元凱旋)
  • 結果: 9R 2分53秒 TKO勝利

試合の背景:天才 vs 天才

当時、まだクロフォードは「期待の若手王者」に過ぎませんでした。対するガンボアはアテネ五輪金メダリストであり、プロでも無敗。「キューバのサイクロン」と呼ばれた圧倒的なハンドスピードを持つ天才です。
戦前の予想は拮抗しており、「クロフォードにとって初めての本当のテストになる」と言われていました。

試合展開と勝負の分かれ目

序盤、ガンボアの爆発的なスピードにクロフォードは苦戦します。本来のオーソドックス(右構え)では、ガンボアの飛び込みに反応しきれていないように見えました。

しかし、ここでクロフォードの恐ろしい「適応力」が発動します。試合途中からサウスポー(左構え)にスイッチし、そのまま最後までサウスポーで通したのです。

右ジャブ(サウスポーの前手)で距離を支配し始めると、ガンボアの踏み込みに対してカウンターの右フックを合わせ始めます。5ラウンドに最初のダウンを奪うと、焦って前に出るガンボアを冷静にコントロール。最後は強烈なアッパーで顎を跳ね上げ、計4度のダウンを奪って引導を渡しました。

この試合の意義

この試合こそ、クロフォードが「スイッチヒッターの完成形」として覚醒した瞬間でした。「相手に合わせて構えを変え、相手の長所を殺す」という彼の必勝パターンは、このガンボア戦で確立されたと言っても過言ではありません。

 

 

【第4位】vs ジュリアス・インドンゴ(2017年)

〜史上稀に見る「4団体統一」を一撃で終わらせたスナイパー〜

  • 階級: 世界スーパーライト級4団体統一戦
  • 結果: 3R 1分38秒 KO勝利

試合の背景:主要4団体統一という偉業

当時、主要4団体(WBA・WBC・IBF・WBO)の統一王者は、ボクシング界にほとんど存在しませんでした(バーナード・ホプキンスやジャーメイン・テイラー以来)。
クロフォード(WBC/WBO王者)とインドンゴ(WBA/IBF王者)が激突するこの試合は、勝った方が全てのベルトを総取りする歴史的な一戦でした。

戦慄のフィニッシュブロー

長身サウスポーのインドンゴは変則的なリズムで攻めようとしましたが、クロフォードは開始早々から全てを見切っていました。
そして運命の3ラウンド。インドンゴが大きな左フックを振った瞬間、その内側をえぐるようなショートの左ボディブローが炸裂します。

派手なパンチではありませんでしたが、肝臓(レバー)を完璧に貫いた一撃。インドンゴは苦悶の表情でキャンバスを叩き、そのままテンカウントを聞きました。

「4団体統一」という極めて難易度の高いミッションを、わずか数ラウンド、しかもたった一発のボディブローで完遂してしまったこの試合は、クロフォードの攻撃精度の高さを世界に見せつけました。

 

 

【第3位】vs ショーン・ポーター(2021年)

〜タフネスの塊を粉砕した「冷徹な処刑」〜

  • 階級: WBO世界ウェルター級タイトルマッチ
  • 結果: 10R 1分21秒 TKO勝利

試合の背景:最強の門番ポーター

ショーン・ポーターは、エロール・スペンスJr.やキース・サーマンといった王者たちと接戦を演じてきた実力者です。無尽蔵のスタミナと猪突猛進のスタイルで相手を泥沼に引きずり込む彼を、完全に「KO」した選手はいませんでした。

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感情を捨てたターミネーター

試合は予想通りの激闘となりました。ポーターの荒々しいアタックに、クロフォードもクリンチ際で肘を使われるなど苦戦を強いられます。ポイントは競っており、会場の雰囲気も「ポーターがいけるかもしれない」という空気に包まれていました。

しかし、クロフォードの真骨頂はここからです。
10ラウンド開始早々、ポーターが飛び込んできたところに、まるで計算し尽くされたようなカウンターのアッパー一閃。ダウンを奪います。
立ち上がったポーターに対し、クロフォードは一切の躊躇なく襲いかかり、右フックで2度目のダウンを追加。ポーターが悔しそうにマットを叩く中、彼の父親兼トレーナーであるケニー・ポーターが棄権を申し出ました。

「誰も倒せなかったポーター」の心をへし折り、物理的にも破壊したこの試合は、ウェルター級におけるクロフォードの力が突出していることを証明しました。

 

 

【第2位】vs エロール・スペンスJr.(2023年)

〜世界が凍りついた「世紀の一戦」、5年越しの決着〜

  • 階級: 世界ウェルター級4団体統一戦
  • 結果: 9R 2分32秒 TKO勝利

試合の背景:現代のパッキャオvsメイウェザー

実現までに5年以上を要したビッグマッチ。3つのベルトを持つスペンスと、1つのベルトを持つクロフォード。どちらも無敗、どちらもPFPランカー。
専門家の予想も「50:50(互角)」と割れており、「判定までもつれる技術戦になる」というのが大方の見方でした。

残酷なまでの実力差

しかし、蓋を開けてみれば、それは「クロフォードによる公開処刑」でした。
1ラウンドこそ様子を見ましたが、2ラウンドにカウンターのジャブでダウンを奪うと、そこからは一方的な蹂躙劇。

特筆すべきはクロフォードの「ジャブ」の硬さです。スペンスの顔面はみるみる変形し、戦意を喪失していきました。スペンスが得意とする接近戦でもクロフォードが打ち勝ち、計3度のダウンを奪ってレフェリーストップ。

「世界トップ同士の対決で、これほどの実力差が生じるのか」と世界中が言葉を失いました。この勝利により、彼は史上初となる「2階級での4団体統一」を成し遂げ、PFP1位の座を不動のものにしました。

 

【第1位】vs サウル・“カネロ”・アルバレス(2025年)

〜階級の壁を破壊した「ラストダンス」〜

  • 階級: 世界スーパーミドル級4団体統一戦
  • 結果: 12R 判定3-0(完勝)

試合の背景:無謀と言われた挑戦

ウェルター級(147lbs)を主戦場としていたクロフォードが、スーパーミドル級(168lbs)の絶対王者カネロに挑む。体重差約10kg。ボクシングの常識で考えれば「無謀」であり、多くの評論家が「フィジカルで潰される」と予想しました。

「柔よく剛を制す」の究極形

しかし、クロフォードは魔法を使いました。
カネロの重いプレスに対し、リングを広く使って足を止めず、カネロがパンチを振るう瞬間にだけインサイドに入ってまとめる。
カネロの強打はことごとく空を切り、逆にクロフォードのコンパクトなパンチがカネロの顔面を捉え続けました。

後半、カネロが苛立ちを露わにして強引に前に出てきても、クロフォードは冷静にカウンターを合わせ、決してロープには詰まりません。
判定は3-0の大差。KOこそなりませんでしたが、ボクシング界最大のスターであるカネロを技術で完封し、3階級での4団体統一(※カネロ戦のタイトル運用による)という前人未到の記録を手土産に、彼はリングを去りました。

まとめ:クロフォードの試合は「バイオレンス・アート」だった

テレンス・クロフォードのベストバウトを振り返ると、共通しているのは「相手の最も得意な土俵で、相手を上回って勝つ」という恐ろしさです。

  • スピードスターにはスピードとタイミングで(ガンボア戦)
  • インファイターには近距離のカウンターで(ポーター戦、スペンス戦)
  • パワーヒッターには究極の技術とIQで(カネロ戦)

彼は相手のスタイルを瞬時に解析し、ダウンロードし、そして破壊する「戦闘マシーン」でした。
引退により彼の新しい試合が見られないのは損失ですが、残された映像は色褪せることのない教科書として、未来のボクサーたちに語り継がれていくでしょう。

Thank you, Bud. あなたが見せてくれた景色は、間違いなく最高でした。

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