標準的な欧米人の体格に最も合った階級であるウェルター級。其れ故選手も多く、ボクシングの本場アメリカでは、ウェルター、スーパーウェルター辺りが一番人気の階級です。
大手プロモーター傘下の選手も多く、この階級のチャンピオンは、必然的にボクシング界のビッグネームとなります。
2018年8月末現在、この階級に王者は4人。どれもハンパない!では、このハンパない4名、最強は誰なのか見ていきたいと思います。
フィリピンの戦う誇り-マニー・パッキャオ
パッキャオはやはり半端なかった。そう思わせてくれた、対ルーカス・マティセ戦。彼との試合に勝利し、パッキャオはWBAウェルター級王座を獲得しました。
1995年デビューのパッキャオ、ライトフライからスーパーウェルターまで制したリアル・パウンド―・フォー・パウンドですが、意外にもWBAのベルトは初めてだったとの事。
記念すべき60戦目ですし、本人にとってもあの試合は大きな節目になったことでしょう。
パッキャオがウェルターで戦ってきた相手は
- ミゲール・コット
- ブランドン・リオス
- メイウェザー
- ティモシー・ブラッドリー
- ジェシー・バルガス
- ジェフ・ホーン
- マティセ
です。
2連敗となってしまったブラッドリーとファン・マヌエル・マルケスとの試合は、スーパーウェルターでしたので、今のパッキャオに一番合っているのはウェルターだと思います。
マティセ戦では、フレディ・ローチと袂を分かつなど、周囲の環境も変わっており、それ故かファイトスタイルも若干の変化が見られました。
スピードある前後のステップは顕在として、ジャブに合わせるひっかけのショート・フックと、これまで見られなかった左アッパーが精彩を放っていましたね。
マティセもガンガン前に出てこず、中間距離で戦っていたので、パッキャオが自分のボクシングを出来た、ここ数年で一番のパフォーマンスかと思います。
とは言っても、キャリア晩年である事は否めません。年齢的なものかどうかは分かりませんが、フィジカルボクシングに弱くなっている感があります。ジェフ・ホーン戦は微妙な判定でしたが、どんどん前に来るホーンに押し切られ、非常に見栄えは悪かったですね。
判定に不服もあるようですが、ホーンのホームであることもかんがみれば、ホーンの勝ちでもまったく不思議はない試合だったと思います。
既に引退はしていましたが、今のパッキャオは、マティセと同じアルゼンチンのマイダナには手を焼きそうですね。
しかし、「負けるかもしれない」という試合にきっちり勝つパッキャオ。その点だけは、若いころと変わらず我々ファンを楽しませてくれます。
WBAスーパー王者、ONE TIME キースサーマン
大の日本好きで知られるキースサーマンが、現在ウェルター級WBAのスーパーチャンピオンの座についています。
怪我もあり、ダニー・ガルシア戦からしばらく試合をしておらず、元々持っていたWBCのベルトは返上している状態です。なので今WBCは空位。
最新のダニー・ガルシア戦を見た印象は、やはりバランスが非常にいい。あとボディにはやっぱり弱い。テレビの映像を見ても、ガルシアのボディ打ちが決まると、スローで再生をされています。
バランスがいいと言うのは、相変わらずの手数の多さで体勢が崩れるという事がほとんどない。飛び込みの左フックの後でも、しっかりと右ガードが有効に働いています。
手数が多いのと、それにガードの隙をねらって打ってるのが凄い。手数が多いのでめちゃくちゃ打ってるように見えますが、丁度空いているところを打っているシーンが多いです。
左フックからの右アッパーも秀逸。2回綺麗にきまっていました。
しかし、それは2017年3月の話。右肘と左手を故障し、1年以上リングから遠ざかっています。それなのにまだスーパー王者にいるという事自体も不思議なものですが、フェリックス・ベルデホのように、怪我上がりでのポカはやめてほしいですね。
早めのリング復帰が望まれます。
「メイウェザーの後継者?」エロール・スペンス・ジュニア
偉大なる王者の後には、その後継者の座を誰に渡すのかという事がよく議論に挙げられます。「ネクスト・パッキャオ」なんかよく聞きますね。
ネクスト・メイウェザーも、もちろんそのはんちゅうであり、エイドリアン・ブローナーなどがそのスタイルも酷似しているので、そういわれていた時期もありました。しかし、マイダナ戦から上の上のクラスの選手には負け越すようになり、その声も薄れてきたように思えます。
現在その筆頭が彼、エロール・スペンス・ジュニアです。現在24戦24勝21KOのパーフェクトレコードを誇っており、ケル・ブルックからIBF王座を奪取後、初防衛戦をレイモンド・ピーターソンと行いTKO勝ち、続くカルロス・オカンポも速攻で沈めています。
ボディが得意なようで、オカンポ含めキャリアの中で8戦ほどはボディで決めているみたいです。オカンポ戦では結構ローブロー気味でしたが、オカンポ自身もあまりアピールしていなかったので、ボディで効いていたのでしょう。
オカンポはIBF3位の格下で、世界初挑戦がスペンスというのもかわいそうでしたね。。
レイモンド・ピーターソン戦を見てみると、こちらはフェンシングのようなスペンスのジャブが光っていました。距離を支配するジャブと、効かせるジャブを有効に使っているという印象を受けます。
ジャブ、ジャブ、左ボディストレートを序盤は多用していました。
中盤から、それに加えスペンスのパワーヒットが増え始めます。ピーターソンも結構良い右を入れたりするのですが、それが余計にスペンスを燃えさせるのか、さらにスペンスからくらってしまいます。
結局スペンスに終始ボコボコにされ、7ラウンド開始時にギブアップ。
この試合で光ったのは、右ジャブを使用しての距離感の支配。右ジャブを打って、すぐに返ってくる相手の左ジャブを見切る目もいい。
そして、パワーファイトも出来る。距離の関係ない接近戦になった際に、少しもらってしまうのが玉に傷ですが、今後防衛を繰り返し、さらに磨かれていってほしいですね。
彼の初めての試練、そしてビッグファイトは、今後予想される対クロフォード戦でしょう。
4団体統一王者、テレンス・クロフォード
一つ下のスーパーライト級で4団体統一を果たしたテレンス・クロフォード。
ウエルターに上げてからは、対ジェフ・ホーンの1戦のみですが、あまり体重増加により苦しんでいるようには見えません。
ジェフ・ホーンと比べるとどうしても体格的に劣っているように見えてしまいますが、突進を右にステップしてからの右フックでうまくいなせています。
パッキャオもそれが出来ていれば、クロフォード対パッキャオのビッグマッチが実現していたのかもしれないのに、残念ですね。
ホーン戦では、フリッカー気味ですが正統派のサウスポー的に戦うクロフォードですが、スーパーライト級での何試合を見る限り、左右どちらでも戦えるスイッチヒッターです。
且つ、どちらでも倒す力を持っているやっかいなファイターです。
ウェルター級最強は誰だ!
ウェルター最強は、スペンスかクロフォードのどちらかでしょう。現在のパッキャオをウェルター最強に推すファンも少ないでしょうし、試合枯れしているキース・サーマンを最強にするのも現実的ではありません。
であれば、実力者のケルブルックとピーターソンを撃破したスペンスと、スーパーライト4団体王者のクオフォードの2人ですね。
この2人を比較すると、スピードはクロフォード、パワーはスペンス。型があるのがスペンス、自由自在がクロフォードといった対比が出来ると思います。
気になるのは、クロフォードがウェルターにおいて耐久性を保てるかという問題。もともとライトで戦っていたクロフォードに、そろそろ体重の壁が立ちはだかるかもしれません。
ホーンはパンチというよりも、フィジカルで相手のスタミナを削るタイプなので、そこまでホーン戦が参考にならないと思うので外します。
クロフォードは、ガンボア戦でも若干ぐらついていましたし、そこまで耐久性があるようには思えません。そこでウェルターに階級を上げ、実力者であるスペンスの攻撃に耐えうる耐久性があるかというと、それが疑わしいですね。クロフォードが勝つという予想確率を下げる一因です。
この2人の試合は、やはりフェンシングのようなジャブの差し合いから始まるでしょう。いきなりごちゃごちゃはなさそうです。
このジャブの差し合いを制し始めるのは、難しい予想ですがスペンスでしょうね。ジャブジャブの後の左ボディにだんだんクロフォードが押されていき、その後パワーヒットが効き始め、判定勝ち。といったストーリーになるかと思います。
よって「ウェルター級最強」は、エロール・スペンス・ジュニアに決定いたします。
まだ正式に何も決まっていない試合ですが、この2人の試合が現時点におけるウェルター頂上決戦としていいでしょう。
まとめ
以上、ウェルター級の王者と、その最強に関してまとめさせていただきました。ウェルターは人気階級ですので、各プロモーター次世代選手の発掘に躍起になっており、新陳代謝も盛んで面白いですね。
早くサーマンが復帰することが望まれますが、今の話題はスペンスとクロフォード。ナチュラルでウェルターで戦ってきたスペンスが勝ち、つまり最強だと予想させていただきましたが、おそらくどちらに転んでもおかしくありません。
実現すれば、本当に楽しみな1戦です。
これだから「ボクシング」は面白い!
おわり