クルーザーはヘビー級より1つ下の階級。古くより、ボクシングといえばヘビー級でした。
モハメド・アリ、マイク・タイソンなど、ボクシングファンでなくても、ヘビー級と言えば誰?と聞けば、この2人の名前のどちらかは出てくるかもしれません。
じゃあクルーザー級はどうでしょうか?そもそもそんな階級があること自体知らない??
クルーザーは、アメリカでも「アメリカ副大統領」と揶揄される階級です。つまり、誰も知らないし興味もない。
とは言うものの今、この日の当たらなかった階級に、スポットライトが当たるイベントが行われています。
「WBSS」ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズです。
では、スポットライトを当てられたクルーザー級最強選手を見ていきたいと思います
WBA暫定王者 アルセン・グラミリアン
WBAには今正規王者がおらず、この暫定王者と休養王者、そしてスーパー王者の三人です。まずは暫定王者の紹介からいきましょう。
アルメニアで生まれたフランス人ボクサー。2018年暫定王者の座に就きました。
アルセンは2011年プロデビューし、13戦した後ヨーロッパ大陸クルーザー級王者となります。これが初タイトル。
今年の3月にスペインのマルセイユで当時同級2位だったリヤド・メルウィと暫定王座決定戦を行い、11回TKO勝ちで今の座を獲得します。
ゴロフキンと同じトレーナー、アベル・サンチェスに師事している事からゴロフキンと練習する機会もあるためなのか、
ピーカブー気味のスタイルで相手に接近し、様々な角度のパンチで相手を仕留める事が得意です。
顎のガードが空くので、アッパーを喰らいやすいのもゴロフキンに似ちゃってる気がします。
あくまでもトレーナーが同じというだけで、そう見えちゃってるだけかもしれません。でも、暫定王者を決めたリヤド戦のラストのラッシュはクルーザーらしからぬ勢いでした。
WBSSのトーナメントには出ていないのですが、トーナメントの制覇者との統一戦が望まれます。
WBA休養王者 デニス・レべデフ
現在既に38歳。デビューは2001年なので、既に17年選手です。元々はライトヘビー級で、2004年ロシア国内ライトヘビー級王座に就きました。
そこからなぜか4年間ブランクを作ります。初のタイトル挑戦はWBO王座を狙ったマルコ・ハック戦。この時点でレべデフは16戦全11KO、パーフェクトです。
結論から言いますが、かなり微妙なスプリットディシジョンで負けます。
オランダとスペインのジャッジがハック、アメリカのジャッジがレべデフを支持していたそうです。普通逆になりそうな気もしますが。。
次とその次はビッグネーム。ロイ・ジョーンズ・ジュニアと、ジェームズ・トニーの2人です。
ロイ・ジョーンズ戦はマルコ・ハックからの復帰戦といえます。
もう全盛期を完全に過ぎた晩年のボクサーに対してですが、最終の10ラウンドラスト1秒TKO勝ちでした。
ジョーンズには「もう引退した方がいい」とファンに言わせてしまうようなパフォーマンスしか見れませんでしたね。
続いてのジェームズ・トニー。この1戦で暫定王者を獲得します。次のハイライトは対ギジェルモ・ジョーンズ戦。
この王座は7度防衛を果たし、正規王座から、さらにはスーパー王座にも認定されます。防衛を重ねてのスーパーなので、実力も伴ったスーパー認定です。
31戦目のビクター・エミリオ・ラミレス戦ではIBFの王座も奪取し、統一王者になります。
しかし、32戦目ムラト・ガシエフに敗北。WBAはかけられていなかったので、IBFの王座のみ失いました。
直近の試合は、WBAのタイトルマッチで対マーク・フランガン戦。
WBA8位の選手、オーストラリアの選手で、この試合が初めての海外に出てきての試合だったようです。
9回にボディフックでダウンを奪ったものの仕留めきることはできませんでした。
フランガンも気持ちの強さを見せましたが、強打とジャブで試合をコントロールするレべデフの経験値の前に手も足も出なかったですね。
今レべデフは休養王者になっています。
レべデフの特徴はなんといっても、その顔の怪我!両目がふさがってしまい、痛々しい顔になることが頻繁にあります。もう宇宙人みたいな見た目です。
それが男の勲章なのか、ロシアでも人気で、スーパー王座2度目の防衛時には、ロシアのプーチン大統領の招待も受け、祝福されています。
怪我の影響でWBSSには出ていなかったんですが、トーナメント覇者のどちらかと対戦も計画されているようです。
WBAスーパー IBF統一王者 ムラト・ガシエフ
上記2人と比べるとスピードが違う。
ミドルレベルのスピードと、190cmを超える身長から放たれるパワーも超一流。
WBAスーパーになるのも分かりますし、WBSS決勝まで駒を進めるのも納得できます。
2016年にWBAスーパー・IBF王者であったデニス・レべデフに勝利、2018年2月にはWBAの正規王者ユニエル・ドルディコスを下し、WBA・IBFを統一します。
この試合はWBSSの準決勝としても行われました。
テクニックで相手を詰めていき、最後は左でのフィニッシュが多いです。特に左ボディは強烈。いきなりの左フックもよく決めています。
確かにガードに何のあるデニス・レべデフには勝てるだろうなという選手ですね。
しかもまだ24歳と若い。ちなみにこの選手もアベル・サンチェスに師事。ハイガードからプレスをかける展開を得意としています。
次戦の相手はオレクサンドル・ウシク。WBSSの決勝です。ちなみにこの試合が終了後、ガシエフはヘビー級に転向すると言っています。
WBC WBO統一王者 オレクサンドル・ウシク
レべデフのWBSS決勝の相手です。クルーザーらしからぬ、ステップを使えるサウスポー。それもあってかニックネームは「The cat」
力はもちろんありますが、随所にうまさを見せてくれます。
WBSSの準決勝兼WBCとWBOの統一マッチとして行われたマイリス・ブリーディス戦。リングサイドには、ウラジミール・クリチコや、ロマチェンコもいました。
ジャブから始まるスキルフルなボクシングを見せるウシク。ポイントは意外に拮抗していましたが、判定でウシクの勝ちでした。
ロマチェンコよろしく、この選手は華麗なるアマキャリアを持っています。
さすがウクライナ。ヨーロッパアマチュアボクシング選手権2008金メダル、世界ボクシング選手権2011金メダル、そしてロンドンオリンピック金メダルの保持者です。
ジャブを打った後、相手のサイドに回り込むロマチェンコばりのフットワークも見せてくれます。
直近のマイリス・ブリーディス戦を見ると、さらにロマチェンコを意識したような動きを見せてくれます。
スピードはガシエフだが、テクニックはアマ経歴が豊富なウシクといったところでしょうか
クルーザー級最強は誰?
クルーザー級の最強は、名実ともにもうすぐ決まりそうです。WBSSトーナメントの決勝戦が行われようとしているからです。
ムラト・ガシエフ対オレクサンドル・ウシク。
どちらかと言えば、どちらもクルーザーらしからぬパワーには頼らない選手。スピードとテクニックを使い、締めでパワーを使うといった印象があります。
この2人は体格も一緒。ですがパワーであればガシエフに分があるでしょう。
この試合を最後にヘビーに移ると明言していることもあり、体内の筋肉量等はガシエフの方がありそうです。
映像を見る限り、ハンドスピードはガシエフ、ステップスピードはウシク。テクニックもウシクの方が持っていそうな感じです。
というわけで、微妙ですがクルーザー最強はオレクサンドル・ウシクを推したいです。
まとめ
クルーザー級のWBSSは、王者の出場も多かったので、「最強」が分かりやすいトーナメントでした。しかも決勝はWBAスーパー、IBF統一王者とWBC・IBFの統一王者同士の1戦。
勝てば4団体統一、且つトーナメント優勝。まさに最強です。
ムラト・ガシエフがこれを最後にヘビーに行ってしまうのは寂しいですが、とりあえずはこの決勝が楽しみです。
中間距離からやや近い距離で強さを発揮するガシエフと、遠い位置で細かいジャブを浴びせるウシク。
試合はガシエフがウシクを追う展開になると思います。ウシクは下がりながらでもパンチ打てますしね。
そのウシクの足に追いつくステップをガシエフが持っているかがキーです。
近い距離ではガシエフのパワーがものを言うと思うので、どちらが勝ってもおかしくない試合でしょう。
おわり