全戦全勝全ノックアウト、このようなパーフェクトレコードは海外ではもうあまり珍しくなくなったが、日本では中々ありません。
しかもそれが海外での試合や世界タイトルマッチを含めているのであれば、なおさらです。
具志堅用高、浜田剛史等大記録を持った名ボクサーを輩出している沖縄からは、長らくチャンピオンが出ていませんでしたが、彼の台頭により、また大記録が生まれそうです。
現WBCフライ級チャンピオン、比嘉大悟。直近の対モイセス・フエンテス戦にて、2回KO勝ちを収め、同時に同じ沖縄の浜田剛史氏に並ぶ、15連続KOのタイ記録に到達しました。
4月15日に行われる対クリストファー・ロサレス戦でのKOで、日本新記録が期待されます。
では、そのKO新記録に必要なものは?さらに、現WBCスーパーフライ級王者のシーサケット・ソールビンサイとの対戦の可能性も含め、書いていきたいと思います!
比嘉大吾が連続KO新記録に必要な物は?
結論から言ってしまいます。比嘉大悟に必要なもの、それは経験です。
素人から見ても分かるように、フィジカルの力は抜群。
前日計量の様子を見ても分かりますが、非常に発達した広背筋はまさにコブラのよう。
「練習では地獄を見せる」という野木丈司トレーナーのもと、食生活まで行き届いた指導を受けており、まだ22歳の比嘉はまだ成長をするでしょう。
豪快なKOに目が行き中々注目されませんが、そのオフェンス技術もかなりのもの。
軽めのボディで下に意識を行かせ、強烈なボディアッパーからの顔面アッパーのコンビネーション。強靭な体幹がなせる技です。
また、コンビネーションの中に右ボディ、右ボディストレートがよく入ってくるのも比嘉選手の特徴です。
最終的なフィニッシュ・ブローは左のフックか右ストレートが多いですが、下に意識を集中させることに長けていますね。
右ボディフックが多いのも特徴。右のフック系は打ちにくい、当たりにくいものなのですが、デビュー戦からうまくコンビネーションの中に取り入れています。
初防衛戦の対トマ・マソン戦では、両ガードを上げて亀のようになったマソンに対し、ガードを力ずくで引き下ろすような、まるでワシル・ロマチェンコのような動きも見せています。
もちろんロマチェンコのように滑らかではなく、力ずくといった表現があてはまるような動きですが、野性味と技術が融合したオフェンスです。
ディフェンス面に関しても、特段心配はないでしょう。
ガードを高く上げて体を左右にウィービングさせながら前進していくのが特徴であり、これまで目立った被弾はありません。
16連続KOの記録の前に立ちはだかるのは、ニカラグアの23歳クリストファー・ロサレス選手です。ここで比嘉選手の負けはあまり想像できません。
29戦26勝3敗17KOと好成績で、キャリアの中でKO負けがないことから、16戦の中では最強だと思います。
動画で何試合か見ましたが、まずリーチが長いというのが印象。
手数も多いです。ただ、被弾も多いし、リーチの長さを逆手に取り、比嘉選手が中に入ればKO勝ちの可能性もかなり上がるでしょう。
比嘉とどことなくスタイルが似ている同じニカラグアのローマン・ゴンザレスとスパーをしており、かなりの対策をしてくるでしょうが、減量さえうまくいけば、怖い選手ではありません。
新記録樹立!大いにありえます。
では、その後仮に比嘉選手がフライに留まるとして、17回18回と伸ばしていくために、必ず立ちはだかるであろう選手は、同じ階級のIBF王者ドニ―・ニエテスですね
海外のメディアでは、比嘉とドニ―・ニエテス選手の試合が臨まれているようです。
直近の試合で、ニエテスは軽量級のイベント「Super Fly2」に出場、ファン・カルロス・レベコに7回KO勝ちを収めています。
その時は比嘉も渡米し試合を観戦。RING誌は、ドニ―・ニエテスをフライ級戦線の最強選手と位置付けていますが、ロマゴンを押しのけ、その最右翼として比嘉選手の名前を挙げています。
比嘉はその時、パッキャオも拠点にするワイルド・カードジムで軽い練習を行い、名伯楽フレディ・ローチに見てもらっています。
そのフレディ・ローチは比嘉対ニエテスの勝敗の可能性を聞かれると、ニエテス有利を予想。その理由は「経験」でした。
ただ、試合数ではまだ16戦と少ないものの、その中にはデビュー4戦目の韓国、WBOユースフライ級のタイトルマッチはタイで行っています
しかも相手は現地タイ人、完全なアウェーで明確なKO勝ちでないと勝利は厳しいと言われる中
7回KO勝ち。
2度目の防衛戦の相手モイセス・フェンテスは元2階級制覇王者です。
ただかませ犬を相手に積み上げてきた15戦15KOではなく、アウェーでの試合、世界タイトルマッチを含めての15戦15KOなのです。
比嘉に足りないものを見つけ、今後のKO記録のために強化したいのは経験が挙げられますが、それは試合数だけでは測れません。
15戦の密度は非常に濃く、15戦連続KOのために「しつらえた」相手ではないのです。
具志堅用高の記録に近づいた長谷川穂積、内山高志は、その直前にマットにしずみ
ウィルフレド・ゴメスのKO記録に挑んだゲンナジー・ゴロフキンは、ダニエル・ジェイコブス相手に、ついに新記録の樹立はなりませんでした。
新記録の樹立というものは、こうも難しい。
しかし、比嘉選手の濃密な15戦は、16戦16勝16KOという日本新記録を樹立するに十分な布石です。
敢えて言うなら、経験。そして比嘉にこれが身に着けば、さらなる躍進を遂げるでしょう。
シーサケットと対戦の可能性は?
とは言っても、比嘉選手が長く今のフライ級に留まる事は考えづらいです。
なんといっても減量苦・・
比嘉選手の通常体重からフライの50.8Kgまでは、約10Kgの減量をするそうです。末恐ろしい
長谷川穂積もバンタム級の時は10㎏の減量をしていました
初めての世界戦ではあまりの減量苦から発狂しそうになり、初防衛では計量後ドカ食いし痙攣をおこしたそうです。
それで野木トレ―ナーは普段の食生活から比嘉に指導にあたるようになりました。
それでもあのパフォーマンス!スーパーフライにあげても減量はきつそうですが
井上尚弥のようにパワーが目減りすることなく、さらに躍動感が増し、KOの量産が見られるかもしれません。
スーパーフライ級にあげた場合、待っているのはローマン・ゴンザレスと2度戦い2度はねのけているシーサケット・ソールビンサイです。
WBAのカリッド・ヤファイや、井上尚弥が統一戦を望んでいたIBFのアンカハス選手がいますが
ロマゴンに二度も勝利しているソールビンサイと対戦するのが、比嘉選手の強さを分かりやすい形で証明する手段になるでしょう。
比嘉選手が体重を上げて、シーサケットと相対したとしても身長はほぼ同じの160cm
通常体重もプラス10kgなわけですから、ロマゴンが突破できなかったパワーの目減りという点においてはそこまで心配はないはずです。
シーサケットは対エストラーダ戦を見てもガードが堅いというわけではありません、現に最終ラウンドはかなりもらっていました。
ただ、シーサケットは比嘉選手のような前にガンガンくるファイターを得意にしている感があります。
直近のファン・フランシスコ・エストラーダしかり、そしてローマン・ゴンザレス然りです。
特筆すべきは、右ボクサーファイタと対峙した時の右足。対峙した時、相手の左足のさらに奥に着地することで、左ストレートの威力もすごいですが
それで相手の足をさばくような形になりバランスを崩すシーンがエストラーダ戦では多く見られました。
崩せなくとも、すかさず相手の左側に回り込み、連打を浴びせるといったコンビネーション。比嘉選手はこのような、老獪なテクニックは今まで味わったことがないはずです。
既に31歳で50戦45勝とボクシング選手としては熟しているソールビンサイ
比嘉選手が今後スーパーフライに上がり、その時まだソールビンサイが最前線にいればうってつけの相手でしょう。
ソールビンサイはどちらかといえば、カルロス・クアドラスのような堅実な試合運びをする選手を苦手としているような気がします。
だが、比嘉選手の「堅実な試合運び」などファンは見たくない。左、右、中央どちらも攻め込めるオフェンスで、シーサケットを粉砕してほしいと強く願います。
まとめ
以上、比嘉大悟選手KO新記録に必要なもの、そしてシーサケットとの対戦の可能性について書かせて頂きました。
次の相手はKO負けのない選手ですが、手数も多く前に出てくる選手です。
これまで最強の相手ですが、新記録樹立のプレッシャーに打ち勝つことのできる突進力を比嘉選手は持っています。
そして、今後そのKO新記録を伸ばしていくために必要なものは経験。
それが身に着けばパーフェクトなボクサーといえるでしょう。将来もしかしたら井上尚弥の対抗馬となりえるかもしれません。
体重の関係で、比嘉選手は間違いなくスーパーフライにあげてくるでしょうが、
その時まだソールビンサイがトップ戦線にいれば対戦可能性は大!シーサケットの老獪さに苦しむかもしれませんが、それを凌駕するコンビネーションを見せてほしい所です。
おわり