スーパー・バンダム級、この階級は、長谷川穂積、西岡利晃ら日本人の代表的名王者を生んできました。
西岡選手による日本人初のWBC名誉王者への認定や、長谷川選手のラスト・ファイトになったウーゴ・ルイスとの激闘は、スーパー・バンダム級の試合です。
この階級で過去に印象深いのはウィルフレド・ゴメス選手。
なんと世界戦17連続KO防衛。ダニエル・ジェイコブスに新記録は止められてしまいましたが、ゴロフキンもタイ記録を持っています。
そして現在、スーパー・バンダム級には暫定も含め、6人の世界王者が君臨。
ダニエル・ローマン、モイセス・フローレス、レイ・バルガス、日本の岩佐亮佑、へスス・マクダレノ、アイザック・ドグボエの6人です。
それぞれの特徴や戦績などから、誰が最強なのか見ていきます
WBO暫定王者 アイザック・ドグボエ
6人いる世界王者の中で、王座に就いたのが2018年1月と最もフレッシュな王者です。アマチュアでの実績もあり、17歳でロンドン五輪に出場していますね。
そして意外なところで日本人とのつながりも。そのロンドン五輪の1回戦で、清水聡選手とあたっていました。
清水選手の判定勝ちだったのですが、オリンピックでたまにある「疑惑の判定」だったようです。
プロ転向は2013年。キャリア初期はアメリカでの試合が多いですが、最近は故郷ガーナでの開催が目立ちます。
ガーナといえばやっぱりアイク・クォーティ。
バズーカと言われた超強力なパンチを持つウェルター級の名ボクサーです。
ちなみにアメリカメディアは、ニエベスと戦った井上尚弥選手を見て「まるでアイク・クォーティのようだ」と形容したとの事。井上尚弥選手はそれに凄い喜んだようです。
そのクォーティの活躍もあってか、ガーナはボクシングが熱いです!
Youtubeで子供同士(小学生か中学生)が路上ボクシングを行う映像を見たことがありますが、かなりハイレベルです。少なくとも日本の6回戦以上の力量はあるのではないでしょうか。
学校でもボクシングを教えているところがあるようで、ドグボエのようなチャンピオンも今後どんどん出てくるかもしれません。
現在18戦18勝12KO、最新の試合は暫定王者を獲得した対セサル・ファレス戦です。
最近アフリカの選手というとゾラニ・テテをよく見るので、ドグボエも手足が長く懐が深い、戦いづらいタイプなのかなと思ったのですが
ジャブは殆ど打たず、接近しての左右ボディとフック。左ボディなんかは1ラウンドから3発連続で打っていました。
そしてフィニッシュも左フックでした。後半案の定飛ばしすぎたのか明らかに失速していましたが、それを補って余りあるパワーがあるようです。
ドグボエを初めて見たのが暫定王者を獲得した試合だったので、過去の試合も同様のスタイルだと思ったのですが、様々なスタイルを持っているようです。
コンパクトフックの連続で押し切るものかと思えば、フットワークも使えますね。
基本の構えはL字ガードですし、サウスポーへの切り替えも可能。非常にスムーズでした。
今まで無敗を通しているのが示す通り、ディフェンスも一流。ヘッドスリップやダッキングで躱すシーンも多く、目がいいですね。
そして4月28日、ドクボエの力が試される試合があります。WBO正規王者のヘスス・マグダレノとの王座統一戦です。
WBO正規王者 ヘスス マグダレノ
2016年よりWBOのスーパーバンダム級正規王者の位置にいるのが、へスス・マグダレノです。兄のディエゴ・マグダレノもボクサーですが、スタイルは兄弟で真逆です。
へスス・マグダレノの方はサウスポーで左右フックを武器になぎ倒すスタイル。現在まで25戦25勝18KOの成績を残しています。
アマチュアの経験も豊富であり、120戦16敗。
元バンダム級スーパー王者のルーシー・ウォーレンに勝ちアメリカ国内のアマ王者、井上尚弥選手と戦ったアントニオ・二エベスを倒しゴールデングローブチャンピオンに輝いています。
アマの成績を買われ、ボブ・アラムのトップランクと契約しプロデビュー。
今までのキャリアのハイライトは、やはりドネアとの戦い。WBOのスーパーバンダム級王者の獲得です。
ウォータースとの戦い以降、下降線を辿るように力が落ちてしまっているドネアですが、ビッグネームを倒してのベルト奪取は大きいですね。
相手がオーソドックスの場合、へスス・マグダレノはリズムを取るように相手の左拳に向けてジャブを打っています。
これをやられると、左ジャブを起点に組み立てたい選手は本当にいらいらするものです。
ドネアはそこまでジャブを打つタイプではないですが、時折見せる高速ジャブがあるので、そのタイミングを失う事でマグダレノのペースになっていったのでしょう。
ステップイン、バッグも高速。よく打っているボディジャブの速さはこの階級最速ですね。
相手と距離がある時は技巧派のようなたたずまいで、接近戦になると左右ボディが強烈です。ドグボエのように変幻自在なので、まさに2人はかみ合うでしょう。
唯一心配事項があるとすれば、2017年4月以降試合をしていないということ。ですので暫定でドグボエが入っているというわけです。
この2人の試合結果が、今後のスーパーバンダム戦線に変化を起こしてくれると思います。
WBA正規王者 ダニエル・ローマン
WBAにもWBOと同様に、現在正規王者と暫定王者がいます。その正規王者がダニエル・ローマン。アメリカのボクサーです。
戦績は27戦24勝9KO2敗とあまり目立たないものです。最新の2試合は両方とも日本人で、久保準戦でWBAの正規王者となり、初防衛戦は大橋ジムの松本亮選手でした。
久保とローマンの身長差は約10cm。しかも久保はサウスポー。
セオリーであれば、久保がジャブをコンコンと突いて、打ち気に出てきたところにストレートといったところですが
ローマンはダッキングで久保のジャブをかわし、そこから強烈なアッパー、フックが決まっていましたね
松本戦では下から打ち崩すようにボディの連打。前に前にプレスをかけて身長差を感じさせない試合でしたね。ダッキングが上手いので踏込も鋭いですし、手数も多い。
アメリカのボクサーというよりも、たまにいる教科書的なメキシコのボクサーのようですね。
日本人が続いているので、今度は元WBOバンダム級王者である亀田和毅選手の名前も出ているようです。
亀田陣営もローマン戦を熱望しており、今度ローマンとスタイルが似たメキシコ人選手ダニエル・ノリニガと対戦をします。この2人の激突は楽しみですね。
WBA暫定王座 モイセス・フローレス
現在27戦25勝2無効試合。2017年6月に行われた対ギジェルモ・リゴンドーとの試合で1度は負けがついていましたが
フィニッシュとなったリゴンドーのパンチがゴング後に打たれたものと判断され、ノーコンテストとなりました。
構えやスタイルだけ見ると、ダニエル・ローマンを高身長にしたような感じですが、典型的なメキシカンボクサーといったところです。
左右のフックは強いですね。リゴンドー戦では正直リゴンドー相手に全くパンチが当たらず、無効試合でラッキーだったなと思うのですが
対オスカル・エスカンドン相手には大ぶりの左右フックが当たり、それで試合を決めていました。
それ以外は特筆することのない選手です。
次戦はおそらく対ダニエル・ローマンと王座統一を行うと思いますが、ローマンの長身選手に対する適応力は日本人二人で既に証明されているので、ローマンが統一する可能性が大ですね。
IBF王者 岩佐亮佑
ニックネームは「Eagle Eye」。日本王者、OPBF東洋太平洋王者と王道を通り、2017年9月13日小國選手を破りIBFのスーパーバンダム級王者となりました。
話題になったルイス・ネリ対山中慎介戦の前座で、初防衛戦を成功させましたね。
初黒星となったのは最初の日本王者への挑戦、その相手は山中慎介選手でした。
その時は将来同じ日に世界戦を行うとは思いもしなかったでしょう。ルイス・ネリの体重超過に関しても苦言を呈していました。
山中対岩佐は2011年のことですが、岩佐ほど山中選手にパンチを当てられた選手はいないんじゃないかと思います。
現在27戦25勝16KO2敗。山中選手やリー・ハスキンスの有名どころ2人に負けています。
最新の対同級13位エルネスト・サウロン戦を見ても分かる通り、3-0の圧勝で技術は完成されています。
しかしながら、もう少し倒す力が欲しいですね。それがあれば、対戦した山中のような長期政権も築けると思います。
WBC王者 レイ・バルガス
WBCに就いているのは、メキシコのレイ・バルガスです。身長172cmと、上述の久保、松本程ではありませんが、スーパーバンダムにしては長身な方です。
トレーナーは国際ボクシング名誉の殿堂博物館に殿堂入りした、口髭と眼鏡がトレードマークのイグナシオ・ベリスタイン。
リカルド・ロペス、ジョニー・ゴンザレス、ファン・マヌエル・マルケスなど名ボクサーを育てました。
10歳のころからボクシングを始め、アマチュアでも活躍実績があります。
アマ戦績は124勝7敗、メキシコ開催の「グアンデス・デ・オロ」というメキシコアマチュアの最高峰の戦いでは、決勝で亀田和毅選手と戦い勝利し、優勝をしています。
2010年にプロデビューし、現在まで31戦31勝22KO。
長身を活かした綺麗なワン・ツー、そして左右どちらでも打ち込めるボディアッパー。イグナシオ・ベリスタインの門下生らしく、非常に綺麗なボクシングをします。
突出しているのは、長身に似つかわしくないそのスピード。長身で、もちろん他の選手よりもリーチがあるので、スピード・長リーチで相手は手が出にくくなりますね。
しかも接近戦になっても腕をたたんで連続の左アッパー、左右ボディが打てるので、外と内どちらでも対応可。
多用するのはジャブ2つからの右フックですね。しかも右フックも遠い距離から撃てる且つ速いので非常に脅威です。
また、遠距離からの左ボディも強烈。連続で打つとカウンターをもらいそうなものですが、相手のジャブしか当たらないような所から打っていきます。
多方面からのパンチとスピード、リーチの長さという要素が合わさっているので、理想的なボクサーだと思います。
直すなら、ガードの低さ。ステップも踏めるし、山中選手のようにパンチをいなすようなヘッドスリップも使うので
バルガス選手自身意図的に低くしているのかもしれませんが、対ロニー・リオス戦で左フックを喰らってしまう危ないシーンがありました。
といっても危ないシーンはそれだけ。長く速いジャブでコントロールし、リオスは懐に入り込めず、バルガスのロングレンジのパンチをもらいまくっています。
リングジェネラルシップを握ることにたけている選手ですね。非常に強いと思います。
スーパーバンダム最強は誰か?
現在のチャンピオン同士であれば、レイ・バルガスが文句なしで最強でしょう。次にくるのはアイザッグ・ドグボエか、もしくはへスス・マグダレノ。
ドグボエとマグダレノは28日の結果如何で優劣がはっきりします。戦前からトラッシュトークも展開しているようで、非常に楽しみですね。
私としては、ガーナのドグボエがファレス戦のように初回からガンガン接近戦をしていけば、ドグボエの勝率が高いと思います。
パワーはドグボエの方が上でしょう。身長がない分、その筋骨隆々の体から、かなりの力があることがうかがえます。
パワー勝負をすればドグボエ。判定まで行ってしまうような長期戦であれば、オーソドックス選手のリズムを崩すのが上手く、ステップイン・アウトで翻弄できるマグダレノだと予想します。
ドグボエは自分のリズムで試合が進められないと非常に荒くなるような印象があるので、スタミナの切れた後半戦マグダレノがポイントを稼ぐかなといった感じです。
次に来るのがダニエル・ローマン、そしてモイセス・フローレスでしょう。
ほぼ同率だとは思いますが、高身長選手の攻撃をダッキングでうまくかわし、カウンターに繋げられるローマン選手が上にくるかなと思います。
岩佐の位置づけが難しいですが、サウスポーで技術があるので、ダニエル・ローマンと同じくらいですかね。
ドグボエかマグダレノには、接近戦に入られて苦戦しそうな気がします。モイセス・フローレスにはテクニックで判定勝ち出来るでしょう。
スーパーバンダム級チャンピオン達の長所をほとんど持っているのが、レイ・バルガスです。
長身、長リーチ、スピード、リングジェネラルシップ、パワー等試合に勝つ要素をすべて持ち合わせた選手なので、今後複数階級制覇していくんじゃないのかと思います。
そしてこの階級には、今チャンピオンではありませんが、亀田和毅とリゴンドーもいます。
リゴンドーは、2階級上のロマチェンコと戦ったことで、WBAのスーパーバンダム級スーパー王座を剥奪されました。ちなみにランキングもありません。
最近のリゴンドーの試合を見ていると、一時の完全無欠のようなイメージはなくなりましたが
一直線のバズーカ砲のような左ストレートは健在!
スーパーフェザーでも力負けはしていないような感がありましたし、相手はあの別格中の別格のロマチェンコです。
そしてあの後半戦になっても完全なポーカーフェイスはボクサーが見習わなければならない姿勢です。同じキューバのガンボアもポーカーフェイス。そういう教育を受けるのでしょうか?
リゴンドーがスーパーバンダムに戻ってくるなら、ドグボア対マグダレノの勝者とやってほしいですね
まだリゴンドーがトップクラス選手相手に十分試合をコントロールできるのか見れると思います。フローレスあたりの選手はまだ楽勝でしょうね。
亀田和毅選手に関しては、アマ時代負けているレイ・バルガス選手に挑戦してほしいと言いたいところですが、正直亀田選手が勝てる要素があまり見つからないです。
和毅選手の武器はなんといっても高速のジャブ連打とスタミナ。
一つ下階級のマクドネル1戦目はそれで試合をコントロールし正直勝っていると思ったのですが、体格の利を崩せなかったため負けてしまいました。
スーパーバンダムになり、亀田選手の体格も大きくなったと思いますが、体格で勝るフローレスや岩佐を崩せるか
そしてドグボア、マグダレノのようなパワー系に負けない力があるのか、5月5日の後楽園での世界前哨戦の後、是非世界戦で証明してほしいですね。
まとめ
スーパーバンダム級最強はレイ・バルガス。井上選手が入ってきたバンダムに比べ、スーパーバンダムは今陰に隠れちゃっていますが、レイ・バルガス非常にいい選手です。
仮に井上尚弥選手がスーパーバンダムに上げた場合でも、正直分からないかも??
それだけ理想のボクサーです。身長が活かせるスーパーバンダムにとどまるのか、それとも複数階級を目指すのか、楽しみな選手を知りました。
WBOの二人、ドグボアとマグダレノの試合も今後のスーパーバンダム勢力図を決めるターニングポイントです。
特にドグボアにとってはキャリアハイライトの一つであろう初めてのビッグファイトなので、是非いい印象を残してほしいですね。
そしてこの中でリゴンドーが戻ってくれば、どの位置に入るのか、もう衰えを見せるのか、キャラクターが多くて面白いスーパーバンダム、今後に注目です。
おわり