ボクシングは階級制のスポーツです。現在ではミニマムからヘビー級まで17階級があり、その一つ一つの階級にチャンピオンが存在します。
今回は、その各階級の意味と一覧、さらに激戦区を見ていきたいと思います。
各階級の意味と概要
①ミニマム級(minimum)
日本語で最小、最小限という意味です。その名の通り、17階級で最も軽い階級。契約体重は47.627Kgとなっています。
ちょっと話がそれますが、なぜこの契約体重がこんな中途半端なのか疑問に思う方もいるかと思います。
これは、ボクシングが階級制になったイギリスの影響です。イギリスは重量の単位がkgではなくポンド(pound)で測られていました。
ポンドで見ると、ミニマムの契約体重は105ポンドときりの良い数字です。105ポンドをkg換算すると、47.627kgということになります。
ちなみに、階級を取っ払い誰が一番強いのかの「pound for pound」もここからきています。確かに「kg for kg」ではダサいですね。
ミニマムという名称ですが、これを使用しているのはWBAだけで、WBC、IBF、WBOはミニフライという呼び方をしています。
かつてはストロー級(藁)とも呼ばれており、どの呼び方が慣れているかという事になるでしょう。
かつて、ミニマムの王者だった大橋ジムの大橋会長は、この「ミニマム」という名前が弱弱しいという事で「ストロー」に戻すことを推奨しているようです。
この階級の有名王者といえばリカルド・ロペス。この階級最多22度の防衛は、未だ破られていません。
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ライトフライ級
フライは蠅(ハエ)それよりも軽い(light)のでライトフライ級と呼ばれます。ジュニアフライという呼び方もします。
ジュニアという呼び方をするのはこのジュニアフライのみ。ジュニアバンダムやジュニアミドルという呼び方もかつてありましたが、現在は一つ下の階級にスーパーを付けたスーパーフライ、スーパーウェルターとなっています。
なぜジュニアフライだけかというと、一つ下の階級がミニマム、ストロー両方の呼び名があったので、統一しずらかったためと言われています。
契約体重は47.627kgから48.988kg。現在日本では拳四朗選手がWBC王座に就いています。ミニマムでの王座を返上した京口紘人選手もこの階級で2階級目を狙います。
フライ級
上述の通り、蠅という意味。蠅のように素早く動き回る階級という意味でつけられたのでしょうが、意味が分かると嫌な階級ですね。。
契約体重は48.988kgから50.80kg。いまここには、チャイニーズドリームの体現者、木村翔選手がWBOチャンピオンとして君臨しています。
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この階級で次楽しみなのは、やはり木村翔VS3階級目を狙う田中恒成の1戦ですね。
スーパーフライ級
バンダムとフライ級の間に作られたスーパーフライ級。元々はジュニアバンダムなどと呼ばれたりもしましたが、上述のように統一が図られました。
ついこの間まで、井上選手が快進撃を続けていた階級でもあります。現在、アメリカでは軽量級にスポットライトを当てたイベント「Super Fly」が定期的に開催されています。
開始当初はローマン・ゴンザレスの人気にあやかりスタートしたのでしょうが、ロマゴンはこの階級で撃沈。シーサケット・ソールビンサイに2度沈められ、未だ復帰は出来ていません。
その「Super Fly」に今度出るのは現役復帰を宣言した井岡一翔。日本人史上初の4階級制覇を目指し、復帰戦はマックウィリアムズ・アローヨと戦います。
「Super Fly2」でカルロス・クアドラスに勝った強敵です。これに勝てば、井岡の米国市場での価値も格段に上がるでしょうから、ある程度アグレッシブなスタイルが必要です。
バンダム級
バンダムというのは、小型種の鶏という意味。契約は52.163 - 53.524kg。「黄金のバンダムを破った男」という小説でも有名ですが、日本人初のこの階級の王者はファイティング原田さんです。
驚異的な視聴率をたたき出した薬師寺対辰吉の試合もこの階級でしたね。日本人の最多防衛記録は山中慎介選手の12度。13度目はにっくきルイス・ネリに破られたことも記憶に新しいはずです。
この階級で有名な外国人選手と言えば、ウィラポンですかね。辰吉選手を2度KO、西岡利晃選手を4度退けた事から、日本ボクシング界の宿敵の異名をとりました。
2018年現在、日本人が最も注目しているのは、このバンダム級でしょう。何といっても井上尚弥のWBSSバンダム級トーナメント参戦。しかも井上対ファン・カルロス・パヤノは横浜アリーナ開催。WBSS側がいかに井上に期待しているかが分かります。
WBSSが日本で開催されるとは予想外でした。是非このチャンスに世界的イベントの目撃者になれればと思います。
スーパーバンダム級
バンダム級とフェザー級の間の階級がスーパーバンダム級。契約体重は53.524 - 55.338kg。
意外にもあまり日本人世界王者が誕生していない階級ですが、日本人初のWBC名誉王者に輝いた西岡利晃はこの階級でした。
さらに、この階級にいたウィルフレド・ゴメス選手は、世界戦18戦連続KO勝利というゴロフキンも破れなかった大記録を持っています。
フェザー級
フェザーは羽毛という意味です。契約体重55.338 - 57.153kg。日本人の標準的体重にマッチした体重だと思います。
しかしこのフェザー級も日本人王者は中々出てきません。粟生隆寛選手を最後に誕生していませんね。それも暫定ですし。
この階級には今7人の世界王者がいます!この階級でこそWBSSやってほしいと思います!
スーパーフェザー級
フェザー級とライト級の間に位置するスーパーフェザー級。契約体重は57.153から58.967kg。
この階級には今タレントがそろっていますね。さらに、スーパーフェザー辺りからアメリカの選手が増えていきます。
WBAスーパーのガーボンタ・デービス、WBCのミゲール・ベルチェルト、そして日本人初のアメリカでの王座獲得を成し遂げた伊藤雅雪がWBO王者です。
日本人初のスーパー王者、内山高志もスーパーフェザー級でした。ラスベガスでボンバーを魅せてくれた三浦 隆司選手もこの階級です。
複数階級制覇を成し遂げているメイウェザーやデラホーヤが最初に王者になった階級もスーパーフェザーでした。
ライト級
ボクシングがスポーツとして認識されるようになったのは近代イギリス。今回のテーマである階級が生まれたのは、1746年の事でした。
その時出来上がった階級は2つ。ヘビー級、そしてもう一つが、このライト級です。
ライトとは、すなわち「軽い」という意味。17階級中の真ん中でなぜ「軽い」のかというと、これはヘビーとライト2つしかなかった時代の名残なんですね。ヘビーに比べると「軽い」ということです。
その後、ヘビーとライトの前後に様々な階級が出来上がり、現在の17階級に辿りついたというわけです。
ライト級の契約体重は58.967 - 61.235kg。世界的に見て、成人男性の平均体重がこのクラスで、最も選手人口の多い階級と言われています。
この階級にいるのはPFP上位ランカーのワシル・ロマチェンコ。そしてマイキ―・ガルシアがいます。
日本人でかつてこの階級を制覇したのは、ガッツ石松、畑山、小堀佑介 、栗生がいます。
最近はこの階級の日本人が中々出てこないですね。最近帝拳所属のリナレスがロマチェンコ相手に惜しいところまでいきましたが、彼でも無理でした。
スーパーライト級
ライト級とウェルター級の間に位置するスーパーライト。契約の体重は61.235 - 63.503kg。ハンマー・パンチの藤猛、WOWOWの解説で御馴染み浜田剛史、そして沖縄の平仲明信がチャンピオンになっています。
この階級だと、日本人にとってはほとんど重量級です。ちなみにWBSSですが、バンダムの他に、スーパーライト級でも開催が決定しています。
なぜ注目されないかというと、バンダムが魅力的である事と、スーパーライトトーナメントは殆ど王者が出ないそうです。これでは何のためのトーナメントなのかよくわからないですね。
ウェルター級
契約体重は63.503 - 66.678kg。ウェルターの語源は「welt」すなわち「強打」。あと「雑多」という意味もあります。欧米人の平均体重に合致しているので、欧米選手が多かったことから「雑多」な階級と名付けられたのかもしれません。諸説あるそうです。
でも、フライ級「蠅」に比べて随分カッコいいですね。後述しますが、スーパーウェルターと併せて、この2階級は人気階級です。
今ウェルターにいる選手もスター揃い。
- キース・サーマン、
- エロ―ル・スペンス・ジュニア、
- テレンス・クロフォード、
- マニー・パッキャオ。
あのメイウェザーもウェルターを主戦場としていました。新陳代謝が起こりやすく、ニュースターがよく出てくる階級です。日本人チャンピオンはというと。。残念ながらゼロ。日本人王者が出ていない、最も軽い階級になります。
スーパーウェルター級
こちらも人気階級、契約体重は66.678 - 69.853kg。ジャレット・ハードやジャーメル・チャーロが今この階級の目玉です。
メイウェザーがいたころよりは、人気が少し落ちてる感が否めませんが、ハイメ・ムンギアという21歳の若き王者が誕生し、どんどん活性化していくと思います。
ミドル級
契約体重は69.853 - 72.575kg。17階級中5番目に重いクラスで、なぜ「ミドル(中間)」なのかというと、最初はヘビーとライトの中間に位置づけられていたことから、重量と軽量の間という事でミドル級とされました。
ヘビー級とライト級に次いで、1890年代に出来た歴史ある階級です。日本人には絶対不可能と言われていたこの階級の王者奪取は竹原慎二によって成し遂げられました。
それ以降、日本人王者はなかなか出ず、20年以上の時が経ち、2人目のミドル級日本人王者になったのが村田諒太です。
今この階級に君臨するのはPFPトップのゲンナジー・ゴロフキン。
「いったい誰がゴロフキンを止めるのか!」がボクシング界の注目するところになっています。
その最右翼が今度ゴロフキンと戦うサウル・アルバレス、そして日本の村田諒太です。
過去のミドル戦線を見ても超が付くスーパースター揃い。「黄金のミドル」と謳われたロベルト・デュラン、マービン・ハグラー、トーマス・ハーンズ、そしてシュガー・レイ・レナードは一時代を築きました。
まさに力とスピードが融合した階級で、見る者を惹きつけてくれます。「ヘビー級が動くがごとく、ボクシングは動く」とされ、ヘビー級偏重だった1970年代までのボクシングに、新しい風を巻き込んでくれた階級です。
スーパーミドル級
ミドル級とライトヘビー級の間のスーパーミドル。契約体重は72.575 - 76.204kg。WBAの初代世界王者は意外にも韓国人でした。しかもIBFは8度も防衛。アジアにこんな選手がいたんですね。
スーパーミドルは、この前WBSSでトーナメントが行われました。チャンピオンの参加がそこまで多くなかったのですが、ある程度の注目は浴びましたね。
現在WBAスーパー王座にジョージ・グローブスなどがいますが、彼を含め世界王者達の知名度はいまひとつ。今後より魅力的なファイターが出てきてほしいです。
ライトヘビー級
スーパーミドルとクルーザーの間の階級。76.204 - 79.379kgが契約体重です。看板選手はスーパーマン・アドニス・スティーブンソンでしょうか。
豪快な左は見る者を惹きつけますね。しかし、この階級も人気はいまひとつ。
クルーザー級
意味は巡洋艦((じゅんようかん)!なんとも格好いい階級です。体重は79.379 - 90.719kg。この階級には現在4団体統一王者がおり、アレクサンドル・ウシクがその人です。
クルーザーはWBSSシリーズ1の目玉であり、世界王者が全て参加。ゆえに優勝者は4団体統一をなしえました。
本来は「アメリカ副大統領」と揶揄された人気のない階級。今でもヘビーやウェルターなどにはかないませんが、今後新陳代謝が起これば人気に火がつくでしょう。
ヘビー級
17階級最重量。この階級の王者は名実ともに「ボクシング界最強」であることは間違いありません。
契約体重は90.719kg以上。上限はありません。
且つ最も歴史の古い階級。ゆえに、王者の乱立をよしとせず、統一戦が行われやすい階級です。ファイトマネーも破格。
「モハメド・アリ」、「マイク・タイソン」。この階級の有名王者はボクシングの枠を超え、壮大な影響力を持てるといえますね。
実は長らくこのヘビー級にはアメリカ人王者が誕生しておらず、2015年まで人気は低迷していました。
その分ウェルターなどに注目がいったのですが、今ヘビーが最も熱いと言っても過言ではないでしょう。
現在、アメリカに久方ぶりにヘビー級チャンピオンベルトを戻したデオンテイ・ワイルダー、そして今最もボクシングが熱い国、英国のアンソニー・ジョシュア。
一人の絶対王者だけではその階級は盛り上がりません。ライバルがいてこそ盛り上がる。
ヘビー級で、しかも英国と米国。これは盛り上がらないはずはありません!
「ヘビー級が動くがごとく、ボクシングは動く」今まさにその時代に逆流しているのではないでしょうか?
階級中、激戦区はどこか?
結論から言うと、ウェルター級とスーパーウェルター級です。
欧米人の体格に最も合っており、スーパースターも次々と輩出。今この階級で注目している選手でジョシュ・ケリーという選手がいるのですが、この選手もボディワークに優れ非常に魅力的。是非注目しておいてください。
私がこの階級を激戦区としたのは、上述の理由もそうですが、亀海喜寛という日本人選手を通して痛感したからです。
亀海選手は、現在アメリカを主戦場にする帝拳ジム所属の選手です。日本人で初めてゴールデンボーイプロモーションと契約した日本人選手で、「マエストリート」つまり「小さな教授」という異名の通り、非常にテクニカルなボクサー。
日本人に珍しいL字ガードとテクニカルなディフェンステクニックで、日本国内では完全に敵なし状態でした。階級をウェルターに上げてから米国に本格参戦。亀海選手のパフォーマンスなら、世界チャンプも夢ではないと考えていたのですが、やはり層は厚すぎるくらいに厚かった。
あの日本国内で敵なしの亀海選手が米国デビュー戦ではいきなりの判定負け。今はスーパーウェルターで、ロバート・ゲレロやミゲール・コットといった超スーパースターと拳を交えてはいますが、やはり感じるのは、この階級での日本と世界との差。
しかもゲレロもコットも、全盛期のパフォーマンスとは遠く離れた、所謂衰えた状態での対戦でした。それでも亀海には大差判定勝ち。決して亀海選手が弱いという意味ではありません。へスス・ソト・カラスに打ち勝っていますし、ガンガン前に出るスタイルは、アメリカボクシングファンの心を掴みました。
亀海選手の米国進出を通し、私はボクシングの中心地アメリカのウェルター、スーパーウェルターの層の厚さを知りました。ここそ、最激戦区と言えると思います。
まとめ
以上、ボクシング17階級に関してまとめさせていただきました。さらに激戦区に関しても。やはり欧米人の体格にマッチする階級は厳しい生存競争が繰り広げられていますね。
ヘビーも今後の動向が楽しみですし、井上のバンダムも日本からだけではなく、世界から注目を浴びています。
今の時代は、ヘビー偏重ミドル偏重という事はなく、どの階級も満遍なく人気があると思います。
おわり